Last Update : 2002/ 2/20

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★最終処分場と環境汚染★

最終処分場 安全性の問題へ≫ 

      
【コメント】
 2002年10月、慶応大学の藤沢キャンパスで行われた「環境行政改革フォーラム総会」での発表資料です。

 
 
【目 次】
 
 
藤原寿和(廃棄物処分場問題全国ネットワーク)、
吉川三津子(ダイオキシン・処分場問題愛知ネットワーク)
 
はじめに
 日本の廃棄物処分場に関する構造基準や法規制の作成に携わってきた第一人者である花嶋正孝氏(現福岡大学資源循環・環境制御システム研究所長)は、2001年5月に出版された叶ュ策研究所発行『次世代型廃棄物最終処分場』掲載の特別寄稿「循環型社会と廃棄物の最終処分の動向」の中で、「最近の我が国の処分場に求められる機能は最終的な処分機能だけでなく長期的な保管機能が循環型社会の形成の中で新しく求められるようになりつつある。」と述べ、そして最後の方で「今後循環型社会を形成していくためには住民の協力なくしては不可能である。そのためには住民が十分理解できる施設ではなくてはならない。すなわち、高度な処理の理屈を住民が見て解るようにする技術が必要である。」「今後、循環型社会をよりスムーズに建設するため、循環型社会のアキレス腱である最終処分場の建設を住民に納得してもらうために、関係者は日夜努力している事を理解してもらいたい。」というメッセージで締めくくっている。では、「住民が十分理解できる」「高度な処理の理屈を住民が見て解るようにする技術」とは何か。
 それはどうやら氏が北九州市響灘地区で開始している資源循環のための施設とそれを支える環境制御の施設づくりのことらしい。その解りやすい一例として、氏は「資源循環施設としては生ごみから生分解性のプラスチックを作る施設」や、「環境制御施設としては、遮水シートの検知と修復システムを現場で再現できる施設」等、「住民が手にとって解るような施設」をあげている。
 なんと技術楽観主義的というか楽天的な方なのであろうか。こんなことで「住民の十分な理解が得られる」と本気で思っておられるのであろうか。これらの各種施設(箱もの)づくりが、ほんとうに「循環型社会」の形成につながるのか、あらためて「廃棄物最終処分場」問題にスポットライトを当てて検証してみたい。

1 廃棄物処分場の沿革
 廃棄物(ごみ)の埋立処分は、「貝塚」に見られるように太古の時代から行われてきたが、行政の手によって「最終処分場」として計画的な整備が行われるようになったのは、高度経済成長期に入った1963年以降のことである。そして、廃棄物処理法の中に「最終処分場」が廃棄物処理施設として位置づけられたのは、1976年6月の廃棄物処理法の改正によってである。しかし、この時にはまだ一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場という定義しかなく、今日のような「安定型」「管理型」「しゃ断型」という3つの類型に区分されるようになったのは、1977年3月の改正によってである。
 この時の改正で将来に大きな禍根を残したのは、最終処分場の届出義務に「スソ切り」を設けたことである。すなわち、一般廃棄物の最終処分場については埋立面積が1,000u以上のもの、産業廃棄物の最終処分場については「管理型」が1,000u以上、「安定型」が3,000u以上のものをそれぞれ届出対象施設としたことである。
 この「スソきり」規定はその後、1997年(平成9年)12月1日の政令改正によって規模要件は撤廃され、すべての埋立地において共同命令が適用されることになったが、それまではいわゆる「ミニ処分場」と呼ばれる安定型で3,000u未満の届出が要らない施設の乱立をもたらすことになった。

2 最終処分場は環境汚染源!  
 欧米では廃棄物の埋立処分による環境汚染の事例が数多く見出されており、その修復が大きな課題とされてきたが、日本ではつい最近まで、廃棄物処理に起因する環境汚染の体系的な調査がほとんど行われてこなかったため、その実態の詳細はいまだに明らかにはされていない。しかし、最近になって相次いで環境汚染の事例が発覚している。その中でも安定型処分場による環境汚染の事例は枚挙に暇がないほどである。そのいくつかの事例を以下に紹介する。

2.1 安定型処分場 
(1) 仙台市青葉区芋沢
 1988年12月に操業を開始したが、1990年6月、地下に埋設した集水管の排水口から異臭を放つ黒い水が付近の沢に流出し、これと合流する広瀬川を汚染していることが明るみに出て問題となった。
 しかし、既に搬入済みの廃棄物の中から汚染物質を特定して除去することが不可能に近く、汚水処理で対応するしかないため、結局、同年秋、営業を一時停止して浄化装置を設置することになった。
 仙台市衛生研究所の水質調査結果によると、1990年1月の検査時に、埋立処分場放流口の排水について、生物学的酸素要求量(BOD)が115mg/L、化学的酸素要求量(COD)が80.2mg/L、浮遊物質量が60
mg/Lであり、その他四塩化炭素や1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有害化学物質も検出された。

(2) 千葉県君津市
 1990年2月に営業許可がおりてから約1ヶ月後には、処分場からの放流水のCODが40mg/Lに達し、さらに同年11月には、この処分場の直下の沢からシアンと砒素と鉛が検出された。
 住民による証拠保全の仮処分申請が認められ、裁判官立ち会いの下で埋立物を掘削した結果、安定5品目以外の産業廃棄物が埋め立てられていたことが判明した。

(3) 長野県飯山市
 1986年に設置された年から千曲川の市内を流れる部分のBODの年平均値が河川の環境基準の約2倍の5.3mg/Lとなり、検査地点の数値の比較から、汚染源はこの安定型処分場であると言われている。

(4) 千葉県成田市(大栄町)
 千葉県の大栄町と接する成田市側に設置された安定型処分場で、隣接するニンジン畑が処分場からのメタンガスの吹き出しや地温の上昇のためにニンジンに根腐れ等の被害が発生しており、近くの民家の井戸からトリクロロエチレンなどの有機溶剤が検出された。
 千葉県による調査の結果、処分場が原因と判明し、業者に改善措置を取らせた。

(5) 福岡県筑紫野市
 1999年10月、福岡県筑紫野市の安定型処分場で、浸出水の水質検査のためのサンプリング作業の際、送水槽内で硫化水素中毒と疑われる作業員3名の死亡事故が発生し、その後の処分場内部のボーリング調査により、ボーリング孔内から最高15,000ppmの硫化水素ガスの発生が確認された。

(6) 滋賀県栗東市
 1999年10月、滋賀県栗東町(当時、現在は栗東市)の安定型処分場外の雨水排水マス付近から硫化水素臭がするとの住民の苦情により、県の立ち会いの下、消防及び町役場がマス内のガス濃度測定を行った結果、最大で50ppm程度の硫化水素ガスを検出し、その後の処分場内部のボーリング調査により、ボーリング孔内から最高で15,200ppm(その後最高で22,000ppm)の硫化水素ガスを検出した。

 この他にも、群馬県吉岡町や栃木県那須町、愛知県豊明市、宇都宮市篠井町などの安定型処分場で“黒い水”の流出問題が発生しており、おそらく全国各地の安定型処分場の至る所で同種の水質汚染問題や硫化水素ガスの噴出問題などを引き起こしていると思われる。
 次に管理型処分場の場合でも、環境汚染をもたらしている事例がいくつも発覚している。以下に紹介しよう。

2.2 管理型処分場
(1) 東京都八王子市戸吹処分場
 八王子市の一般廃棄物を最終処分する戸吹処分場では、1985年7月、処分場の防災調整池から河川に汚水が流出するという事故が起きていたことが発覚した。市では、すでに20メートルも埋められたごみ層を取り除いて処分場の底部に張ってあるゴムシートの状態等を確認するなどの原因調査を行った結果、ゴムシートの破損が見つかった他、汚水集水管と地下水集水管の施工不備や雨水マスのキャップの破損による浸出汚水の流入等が原因であることも判明した。

(2) 東京都日の出町谷戸沢広域処分場
 東京都多摩地区の27市町で構成する三多摩地域廃棄物広域処分組合が管理する一般廃棄物の最終処分場で、内陸埋立型のモデル処分場として1984年4月から稼働を始めた谷戸沢処分場で、1992年3月、新聞が「汚水しゃ断シート破損」と報じたことから、周辺住民の間に汚水漏れの不安が高まり、民間の分析機関に依頼して水質検査を行ったところ、防災調整池と処分場に隣接した民家の井戸から自然界には存在しないプラスチックの難燃剤が高濃度に検出された(1992年5月18日発表)。5月から6月にかけて、処分組合、東京都及び日の出町が行った調査結果でも、防災調整池や民家の井戸から難燃剤や飲料水基準を超える鉄やマンガンが検出されたが、三者とも「処分場の影響はない」と「安全宣言」を出した。その後11月には日本環境学会が独自の調査結果を発表、防災調整池の下流の底質から高濃度の鉛、亜鉛、マンガンが検出されたことなどから、汚水漏れの疑いが一層強まった。しかし、12月になって東京都はダイオキシン類の調査結果を含めて一連の水質調査の最終結果を発表し、「周辺に影響はない」と再び「安全宣言」を行って調査の打ち切りを表明した。
 しかし、その後、地元住民によるデータの開示を求める裁判で、地下水集水管の蒸発残留物や電気伝導度等のデータが開示され、それによると、疎分譲の操業開始直後から既に汚水漏れの影響が及んでいることが判明した。この原因にいて、東京都では処分場の調査の結果、雨水マスに破損があったためであることを認めた。

(3) 千葉県銚子市民間処分場
 1993年頃から銚子市内にある民間の管理型処分場に隣接するキャベツ畑で、地温が最高60℃まで上昇し、特産のキャベツが枯死するという被害が生じていたが、千葉県環境部の調査の結果、処分場の地下約15mの処分層で発生したメタンガスが、処分場と畑を仕切る厚さ7.5cmのコンクリートしゃ水工の亀裂部分から漏れ出したことによるバクテリアの発熱化学反応が原因とし、業者に対し補修工事などの対策を勧告指導した。

(4) 神奈川県横浜市神明台処分場
 横浜市営の一般廃棄物管理型処分場(神明台処分場)に隣接する新橋町の井戸水と湧水中から高濃度の塩化物イオンとカルシウム及び環境基準は下回っているがダイオキシン類も検出された。市では学識経験者らによる「保全対策検討会」を設けて検討した結果、原因は焼却灰に含まれていた塩分が水に溶け出して地下の粘土層から浸透し、流出したものと結論づけた。市では、今後遮水壁の設置や井戸を掘って処分地内の滞留水の排出、表面に浸水防止策を講じるなどの環境保全対策工事を実施するとともに、引き続き水質の監視を続けるという。

(5) 千葉県八千代市一般廃棄物処分場
 1994年12月に搬入を開始された一般廃棄物処分場の遮水シートに数カ所の亀裂が発見されていたことが、2002年2月に千葉日報社の調査によって判明した。市では約4年ほど前から遮水シートの破損を確認し、再三にわたり補修していたが、市議会に対してこの事実を公表したのは2月24日に開催された市議会全員協議会の席上が初めてだった。
 市によると、シートの抜本的な補修に約55億円の経費がかかるという。

(6) 愛知県津島市新開処分場
 津島市が造成した汚水漏れ検知装置の設備された二重ライナー真空管理方式の管理型処分場で、施工中の1996年5月から埋立が終了する同年12月にかけて少なくとも27箇所で遮水シートの異常を検知し、汚水が漏れた疑いが持たれた。このことが、新聞報道され、私たちが実態調査をするきっかけとなった。98年には、15箇所の破損が見つかり、10月、側面の5箇所のみ袋構造体にセメント注入により修復を行った。市は「43ブロックのうち15ブロックで破損の可能性」と発言し、破損の事実を認めた。99年12月、01年12月に再検査を行ったところ、破損箇所は検査のたびごとに増えている。
 市では搬入を開始した96年4月から新開処分場の水質測定を行ってきたが、その結果によると、湧水中のCODや溶解性の鉄・マンガンが異常に高いことが判明していた。また、【グラフ1】のように侵出水と湧水が同じような曲線を描くことは、湧水が侵出水の影響を受けている可能性が高い。
 津島市の事例は、埋立後も遮水シートが破損し続けること、2重シートでも不十分であることを裏付けるものと考える。

(構造&損傷検査方法)
シートの構造は、【図1】のように、43個の袋構造体になっており、真空圧の変化により遮水シートの損傷を検知し、真空ポンプで吸い上げられた水質により、上部または下部シートの破損かを判断できる仕組みになっている【グラフ2】。平成13年の検査では、真空圧検査は連続3度行われ、3度全て、以下の@〜Bのひとつにでも該当するもの、また、3度とも吸水量が多かったものをNGとしている。
@1分以内に66.5Kpaに達する
A50分以内に66.5Kpaに達しない
B66.5Kpaに達した後、5分以内に19.9Kpa以下になる 
(真空圧検査の結果より/【表1】参照)
《*施工段階でのシート破損*》
 津島市清掃事務所作成の「津島市新開処分場見学資料」によると、施工段階で、5カ所の破損を発見し、原因が1.作業員の不注意2.無理な施工がシートに極端なひっぱりを与えた3.シートの溶着部の不具合であったこと、その破損の最小のものは3mm平方であり、検知システムとしての高い性能を証明したと記されている。このように真空検査結果をシートを目視することによって確認していることから、検査結果は信頼できるものと考える。なお、埋立後の検査は、3年度行われているが、NGの判断基準が統一されていない。
《*平成10年の破損について*》
 3度の検査全て吸水量が多い15箇所をNGとしているが、そのうち、側面5カ所のみをセメント注入により、修理した。
《*平成11年の破損について*》
 3度の検査全て上記@〜Bのひとつにでも該当するものを「破損の疑いがある」、3度の検査のうち1度でも@〜Bに該当するを「破損の疑いがあるが判断できない」としている。また、3回修理が可能とメーカーから売り込まれていたが、修復済み箇所の真空圧検査が出来ないことがこの年に判明すると共に、損傷の疑いがある箇所は27カ所にも昇っている。
《*平成13年の破損について*》
 平成11年の検査で「破損の疑いがある」と表現されていたものが「破損」という断言的な表現となり、「破損の疑いがあるが判断できない」とされていたものは「詳細検査必要」とされている。しかし、多量の水が出たブロック(表1の「×m」表示)は、破損が考えられるとしながらも、「詳細検査必要」の判定にとどまり、修理予定箇所から除外され、要修理箇所を3カ所にとどめている。

《*まとめ*》
埋立初期、侵出水も湧水も大変不安定となっていることから、初期にシートに大きな負担がかかると考える(【グラフ1】)。年々破損箇所が増え、平成13年度調査では、27ブロックと34ブロックで新たな異常が見つかり(【表1】)、埋立終了後も、破損が続くことを表している。また、グラフの曲線の形状から、特定の物質においては侵出水が湧水に影響を与えているも考えられ、2重シートといえども侵出水が漏れ出ている可能性も否定できない。このような調査結果がありながら、一カ所修理に約200万円かかることから、13年度は3カ所の補修にとどまり、他の箇所は放置したままとなる予定。

◆施設の概要と経過
 ●総工費 : 10億5千万円
  (厚生省からの補助金:約2億700万円)
  (県からの補助金:約4千900万円)
 ●規 模 : 18,500u
  埋立容量:50,800立米
 ●遮水シート工 : 
  ・ 素材:合成ゴム(E.P.D.M)
  ・ 厚み:1.5mm×2重構造
  ・ 構造:2重ライナー真空管理方式
  ・1つの袋構造体を300uとして、43の袋   構造体ブロック
 ●埋立ゴミ : 不燃ゴミ・焼却残さ
 ●搬入計画 : 9年間3ヶ月
       (平成8年4月〜17年6月)
 ●実 績: 平成8月5月〜 8ヶ月間
  既存処分場からも11,800立米を搬入、閉鎖

【図1】袋状の遮水シート構造



【グラフ1】水質検査結果
【表1】シート真空圧検査結果             
【グラフ2】袋構造体にたまった水の検査結果

 
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開設: 98/12/01