● 家庭用焼却炉 来年12月から使えない
5月23日(水)=信濃毎日新聞より
廃棄物処理法の一部改正で、四月から野焼きが原則禁止され、家庭でのブロック積みやドラム缶焼却炉が使えなくなった。このため、基準を満たす家庭用小型焼却炉を新たに購入した人も多い。しかし、環境省は三月、こうした小型焼却炉の規制をさらに強化する省令改正を決定。現在、市販されているほとんどの家庭用焼却炉も来年十二月以降、使えなくなる。町がチラシを配ってこうした焼却炉が使えることを知らせた下伊那郡阿南町などでは、住民から戸惑いの声が出ている。
省令改正では、煙突とたき口以外は外気と接しない構造なら使用が認められてきた小型焼却炉についてもダイオキシンの排出量を抑えるため(1)八百度以上で燃焼(2)外気と遮断された状態で、(自動的に)定量ずつ廃棄物を投入できるようにする(3)(炉内の)温度を測定する装置を設ける―などを義務付けた。この方針は三月二日付でホームページに国民の意見募集(パブリック・コメント)の形で掲載。決定は同二十六日付の官報に掲載、その後、都道府県を通じて、市町村に通知した。
ごみを自家処理する人が多い阿南町では、町が三月半ば、野焼き禁止を呼び掛けるチラシを住民に配布した。その中で、外気との接触個所の構造条件を満たした小型焼却炉なら使えることなどを知らせた。町は環境省のホームページは見ておらず、規制強化の方針が県を通じて伝わってきたのは、この直後だったという。
町などによると、現在市販されている家庭用の焼却炉は数十万円のものでも、新たな基準を満たせない。しかし、町内約千九百戸のうち百戸以上がこの春、小型焼却炉を購入。三月上旬に約五万円の炉を購入した六十代の男性は「五、六年は使えると思っていたのに。来年で使えなくなると知っていたら買わなかった」。同町は昨春から本格的に分別収集を始め、週二回、燃えるごみも集めているが、購入した人たちは「ためておかずに処分できるごみ焼きの習慣は簡単には変えられない」と口をそろえる。
隣接する下条村でも二十―三十戸、天竜村でも十戸程度が買ったという。ただ、県内の他の市町村は、小型焼却炉の購入の相談を受けた場合、「いずれ使えなくなる可能性があるので、買うべきではない」と、ごみ収集に出すよう勧めた例が多い。
阿南町の担当者は「チラシで呼び掛けたのが、皮肉な結果を招いたのかもしれない。まじめに考えた住民が損をする結果になってしまった。国は全体を考えた一貫した規制を出すべきではないか」と訴える。これに対し、環境省廃棄物対策課は「他の地域からは聞こえてこない話だ。きちんとした焼却炉でごみを焼いてもらう目的で出した規制のつもり」としている。